Focal Clear MG PROのレビュー

Focal社のClear MG PROを購入したためレビューしていきたいと思います。

派手な見た目ですが決して滑っていないのがフランスの大手メーカーらしさを感じられ、個人的には好感が持てます。

この見た目なので外使いは厳しいですが開放型で家用のヘッドホンな為問題はありません。

音質はよくても見た目から購入を躊躇うイヤホンは多いですがヘッドホンならこの点を考慮する必要がないのがありがたいです。

 

Focalのヘッドホンですと、他に気になっていたものは「Utopia」と「Stellia」がありました。

「Utopia」は特価品があったときに一度聴いて良い印象があったのですが、その時に同じく特価品で並んでいたHE 1000 v2を選んでから未だに聴けていません。

また今はバランスケーブル同梱場の新品しか在庫がなく値段が高価な為見送りました。

(今思えばあの特価品はマイナーチェンジ前の在庫一掃セールだったんだと思います。)

 

Stelliaは何度か試聴して良い印象はあるものの、購入までは踏み切れませんでした。

後は(というよりも一番の理由かもしれませんが)付属アンバランスケーブルが1.2mしかないのは大分厳しいです。ここまで高価な価格帯なら密閉型といえど据え置き運用に適したケーブルにして欲しいと思っています。

 

今回買ったMG PROですが付属ケーブルは1.2mと5mのケーブルが付属します。

(3.5mmと6.35mmのプラグです)

 

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5mと大分長いケーブルですが、コイル状になっているため伸びていない状態だと1.2mのケーブルと長さは変わらずかなり便利かつプロ用途としては適していて便利な印象です。

ただ伸びていない状態だと、その伸びていないケーブルの長さ分だけテンションがかかるので、多少の重さを感じるので注意は必要です。

ケーブルが長い分、音質に影響があるかと思っていましたが、サラッと聴いた限りだと違いは分かりませんでした。

音質

環境は基本的にWM1Z→Qutest→Moon 230HADです。

「PRO」と名前についているだけあって、モニター調な淡々としたサウンドだろうな、と期待していると恐らく肩透かしをくらうヘッドホンだと思います。このヘッドホンは暖色系な傾向かと思います。

また開放型ですが音の距離感はかなり近いです。開放型らしい前方の広さはなく、全体を俯瞰するような位置から聴くヘッドホンでもありません。

こんなことを書いていると果たして大丈夫なヘッドホンなのだろうかと思えてきますがしっかりと魅力はあるので書いていきます。

 

 上で書いた通り音色は全体的に暖色傾向かと思います。

かましさ・刺さりを感じることなくゴージャスなサウンドといえるでしょうか。

全体的に書いていきたい所ですが、このヘッドホンは低域をまず語ってからでないと他を書くのが難しそうなので、先に低域から見ていきます。

 

低域

特徴的なのは低域~中低域が厚いことです。開放型だとタイト目な音を想像しますが、MG PROは立ち上がりは緩く、量感も開放型にしては多めです。

 

例えですと、極端に言えば最初は空気感を含んでパンチ良く鳴り始めるのですが、消え際はそれが残りません。この空気感で最初の立ち上がりが緩いように感じます。

密閉型ですとこの感覚を維持したまま最後まで押し切ると思いますが、開放型のMG PROでは頭の押し出しのみ強く、最後はフッとここが切れます。意地悪な見方を変えれば腑抜けた低域ともいえるかもしれません。

 

密閉型で低域を聴くとどうしてもハウジング特有の癖がついてきますが、開放型のMG PROにはそれがなく、量感は多いながらも最後の消え際は早いのでスピード感が良く感じられ、かなり特徴的な鳴り方をしています。私はこの低域を他のヘッドホンでは聴いたことがない...かつかなり良い点だと思っています。

 

またMG PROを聴いているときにハウジングを手で塞いでも、聴いている音は左程変わりません。

(例えですとGRADOでハウジングを覆ったときの変化具合が10割だとしたらMG PROは1割くらいの変化でしょうか)

このことから開放型採用の理由は聴覚上のヌケ感・音場の広さを実現するためというよりも、ハウジングの癖を音に乗せずに逃がすためなのかなぁと個人的には思っています。

 

また低域の階調感がとても良いです。

開放型にも関わらず低域がレイヤー分けされたかのごとく、よく聴こえます。他のヘッドホンなら塊・点でズドンと来る箇所は柔らかく広く鳴ります。ただ柔いだけではなく、普通なら塊・点と感じる箇所はほぐれて解像感が異様に高いです

(なので「階調感」という言葉を使いました)

 

中域

距離感はかなり近いです。

近いのですが音像は柔らかく艶を感じる鳴り方なのでやかましさは感じません。解像感はお値段なだけあってかなり高いのですが、全体1つ1つの音をカリカリと立たせて鳴らすタイプではないかと思います。

 

またボーカルの質感がかなり優れていると思います。

どの音源を聴いてもマイクから流れてきているだろう自然な音で驚きました。どこかの音源でなら多少ハイがキツめになる・声がガサつくといったことがあるのですがただただ自然です。

この鳴り方で解像感が劣っていれば聴きあたり重視なリスニングヘッドホン止まりですがMG PROはしっかりと解像感はありますのでFocalのチューニングの上手さが分かります。

なんとなくですがフランスという国柄らしく、優雅な、余裕感を感じれることができる帯域でした。

 

高域

比較的大人しく、金物系の音を聴いても絶対に刺さりを感じることはないかと思われます。

主張は低域と中域に比べれば控えめです。

ここでも低域と同じくハウジングの響きによる助長を感じなく、ドライバーのみから発せられるビシッとした質感が分かります。

ここで高域まで伸ばしてしまうとかなりハイテンションなサウンドになってしまうので、引き算的に考えればこの音には納得です。

ここはエージングで変わるかもしれないので様子見です。

 

他の雑感

音場はかなり近いのですが、音自体はしっかりと拾い、定位感は抜群に良くて「PRO」らしくここはかなり優秀です。

正直ここが悪ければ低域の多い量感・中域の近さがある分「PRO」は名乗れないかと思いますが、この点が優れている分安心です。

 

また鳴り方が少しスピーカーっぽいなと思いました。

スピーカーが前から鳴っているような...という意味ではなく、音が点と点で結ばれて聴こえてくるようではなくて、1つの音の波として自然に聴こえるからです。

これで解像感・定位感・情報量はしっかりとしている所がスピーカーをメインとしているFocalのチューニングレベルの高さだと感じました。

 

装着感は素晴らしいと思います。このブログを書いている日だけで

通常リスニング2時間

ライブ映像鑑賞3時間

ブログを打ちながらヘッドホン3時間

と装着しているですが、首・肩は軽いです。

重さ自体は450gとそこそこの重さですが、装着しながらでも程よい密閉感のお陰でズレを感じず首・肩に凝るような姿勢をさせないことが理由としては大きそうです。
手持ちですとT1 2ndが近い装着感かもしれません。

最後に

PROと名前がつくのでリスニング向けではないかと思われるかもしれませんが、楽しく効けるヘッドホンかと思います。

どの帯域も暴れることなく大人で優雅なチューニング...かといって「PRO」を名乗るだけにスピード感や定位感はしっかりと良い。他のヘッドホンには出せない良さが味わえるかと思います。