Focal Utopiaのレビュー

今回はFocalのUtopiaをレビューをしていきたいと思います。

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このヘッドホンは去年の8月に購入して、なかなか感想が定まらずにいましたがやっと纏まってきたので書こうと思ったところです。

 

このヘッドホンの最大の特徴は環境次第で音が良くも悪くもかなり変わることかと思います。

他の方も書いていますが、僕もそれを大きく体感したので合わせて書かせていただきます。

これは良い機器を持てばいいという訳ではなく、電源や接続ケーブル・振動対策などが重要になってきます。

たかがヘッドホンのくせに(とんでもない値段ですが)…と自分は思いたくなりましたが事実この辺りの対策が大事です。

色々と環境をいじって自分好みに持っていける、オーディオ趣味の人間としてはかなり楽しめるヘッドホンかと思います。

納得して感想を書こうと思うまでにほぼ1年かかりましたが…

 

このヘッドホンは体験したことを踏まえて感想を書いていきます。

 

 

まずこのヘッドホンを買う前に、同じくFocalのMG PROを持っていたのですが、HPAをその時使っていたSimAudioの230HADから上位機の430HADに変えたところ、相性が良くなく(短く言うとかなり中域が厚ぼったくダラッとした音になってしまった)手放してしました。

430HADの重厚さとMG PROの音が見事に被ってしまったのが良くなかったです。

430HADと比べると軽快な音である230HADでは問題なかったのですがこればかりは難しい問題です。

 

そこで、折角430HADを買ったのだから、それに見合ったヘッドホンを買ってやろうと考えた結果がutopiaでした。

D8000とも迷ったのですが、やはり重量が気になってしまい見送った経緯があります。

(音は自体はかなり好みで、平面駆動の緻密さと、他の平面駆動では聴けない質・量ともに抜群な低域が合わさったズルい音を出すヘッドホンだと思っています。)

 

相性が合わなかったMG PROの後に同じ会社のUtopiaを買ったのは大分博打でしたが、多くのレビューに書いてある「環境次第で音が大きく変わる」というところに惹かれていました。

DACのQutest、HPAの430HADの環境でどの程度の音が出るのだろうか?という知識欲が一番大きかったのです。

 

実際に手元に届いて聴いていると、430HADで聴くMG PROとは違い、中域の距離感がベタッと近すぎることは無いことに安心しました。

ここが懸念点だったのでまずはクリアです。

この時のUtopiaはMG PROよりも少しキレ感が上がった低域・整った距離感の中域・高域は余り出ずに少しベリリウム素材の癖と思われる色が乗った感じの音でした

 

MG PROよりは良いと思うものの、他のヘッドホンと比べて何か抜きんでいる所はなく、10〜20万帯のヘッドホンとそこまで差がないのかなぁと思ってました。

(今になって思い返すと、MG PROも上流の音をよく拾うタイプだったのだと思います。

「PRO」と名乗っているだけあって、プロ用途のDAC・アンプのような癖が強すぎない物と合わせて上げた方が良かったのかなと。

以前試聴したHPA4との組み合わせは良かった記憶があります。)

 

今あるQutestと430HADが悪いとは思えず、もっと他に伸ばせる箇所がないかとまずは電源に目をつけました。

電源は壁コン→2pのオヤイデの電源タップと、取り敢えずあれば安心だろうと思える程度の電源環境だったからです。

そこでアコリバのタップ(3万円ほど)を買ってみました。

以前と比べて音の雑味が取れ、音の暴れる感じが収まりました。

 

ここで「暴れが減る」という感覚を覚えてしまったのが一番大きかったです。

ここで言う僕の暴れる、というのは丸く沈むべき低音がボサついた質感になり、中域に滑らかさがなく、高域はシャっと描いた線のような鳴り方という感じです。

 

この変化さえ知らなければ、Utopiaはこういう音なんだなぁと思って終わりなのですが、変化を知ってしまうと「これはまだまだ良い方向に変わっていくんじゃないか?」と考え始めてしまいます。

ここからが沼でした。Utopiaを買った時の環境と今の環境を比較して書いていきます。

 

最初

・電源は壁コン→オヤイデタップでここから2機種に接続

 

・430HADの電ケーはAETの2万程度のもの

ボードはホームセンターで買った御影石の上にIsoAcoustics ISO-PUCK miniの4点支持

 

・QutestはFidelixアダプターを使用

 

現在

・電源は壁コンの1口にSilver Hermonizer(以下Harmonizer)、もう1口にプロケーブルのアイソレーショントランス

そのトランス(ここでもHamonizerを1つ挿し)から430HADへ直接続、Qutestはトランスに繋げたアコリバのタップから接続

 

・430HADの電ケーはみじんこで売っているHELIOS-Ⅲ C

ボードはクリプトンのハイブリッドボードに付属の脚

空き端子にHarmonizer RCAを2本

 

・QutestはFidelixアダプター

空き端子にHermonizer BNCを2本

 

 

…といった感じです

大分色々と買って整えましたが、DACのQutest、HPAの430HADは買い換える事なく満足できる音が得られました。

 

最近引っ越しまして、その時に使っているアクセサリ類を全部外して聴いてみましたが、比べてしまうと酷い音だったのでこの辺りの投資はUtopiaを買うに当たって必要になってくるかと思います。

良い上流機器だけでは満足させてくれなのがなんともいえません、高い金出してるんだから黙っていい音出してくれても良くない?と思いたくなりますが、手を出しただけ見返った音を出してくるのが憎いです。

 

話を戻して、その時の酷さから取り敢えずは一番最初に対策しないとマズイなと思ったのは振動対策です。

430HADの下にISO-PUCK miniを使っていたのですが、それを外して御影石の上に置いたらかなり悪化して驚きました。

ドンシャリ気味に変化して、低域が昔聞いた通りに暴れて、全体的に水っぽさはあるのですが、どこか油気味というのか、何か気持ち悪い引っ掛かりがあったのを覚えています。

ISO-PUCK miniがしっかりと仕事をしていたのかと思いますが、結局そこからクリプトンのハイブリッドボードを買っています。

 

御影石+ISO-PUCK miniと比べるとクリプトンのボード単体の方が静寂感が上回っていて買って正解でした。

 

他に電源トランスやHermonizerについては以前書いたココにありますので見てもらえればと思います。

https://omati.hatenadiary.com/entry/2021/10/24/

 

追加でQutest用のHarmonizer BNCを2つ買っていますが、これはs/n比の向上と高域の伸びに貢献しています。

他のアクセサリー類では高域の伸びはあまり体感していないので、Utopiaに対してはかなり重要なアイテムになっています。

 

 

こんな自分の環境のUtopiaの感想を書いていきます。自分のUtopiaの音なので他の方とは違う可能性があります。

現在の状態ですと、手持ちのヘッドホンで一番の音を鳴らしていると思っています。

 

自分はこのヘッドホンは低域担当、このヘッドホンは中域担当…と、ある程度枠にはめて運用しているのですが、今の状態ですと低域はutopia、中域はutopia、高域もutopia、分離も音場も…

といった感じになってしまっています。

 

音場の広さといったところでは単純にドライバー径が大きいHD800sやADX5000の方が広いですが、スピーカー的な繋がりの良さ・音の浮かび上がり方という意味ではUtopiaの方が上まっているかと思います。

分離的な所ではこの価格帯なので差を感じませんが、重要なのはutopiaは40mmドライバーなのに劣る結果にならない事です。

他2つと比べるとギュとした近い音場なのですが、しっかりと分離し定位も明確・音像をクッキリと描き、立ち上がり・下がりまでしっかりと鳴らし切ります。

 

立ち上がり・下がりの部分は高域が特に分かりやすく、utopiaの高域は他のヘッドホンなら「ツッ」や「チッ」といった鳴り方をする所を「カツン」とした鳴り方をします。

ハイハットを例にしますと立ち上がりの金属にスティックが当たる「カ」の鳴り方が力強いです。

他のヘッドホンならここが曖昧になりがちで「カ」が抜けて「ツッ」だけなり、高域が目立っていても当たりの部分がなく、抜けていくだけと行ったことは結構ありますがUtopiaにはそれがないです。

帯域バランス的にutopiaの高域の主張は標準的かほんの少し控えめといった所ですが、ここの鳴らし方は抜群に優れているかと思います。

 

中域はナチュラルで透明的かと思います。

他の帯域でもそうですが、開放型なのでハウジングの力には頼らないドライバー単体の音なので純ベリリウムドライバーの音です。

ただ開放型ヘッドホンだと純ベリリウムドライバーの物がなくイメージがつきづらいです。

ただイヤホンなら純ベリリウムドライバーの物があります、A8000です。

 

Utopiaは最初A8000の様な中域だと全く思っていませんでしたが、段々と環境を整えていくと近い所があるかと思えてきました。

ボーカルは膨らみはなく色付けもないので艶かしい感じではないですが、伸びやかで音源を細かいところまで解像する能力は抜群なので、結局はかなり滑らかでエロいボーカルに感じます。

 

更に低域の深さが素晴らしいです。

量感は開放型にしては少し多めといったくらいで、決してモリモリとした鳴り方ではないですが、今まで聴いたイヤホン・ヘッドホンよりも更に深く沈み込める感覚です。

手持ちイヤホンですと低域番長なAtlasがあるのですが、アレの方が低域の量感はずっとありますが、沈み込める深さでいうとUtopiaの方が上です。

Atlasの音を知っている人ならこのイヤホンが相当深い低音を鳴らすことを知っているかと思いますが、utopiaはスマートな量感でこの沈み込みを実現しています。

 

そのお陰で色々な音源に対しても相性問題が起きにくいです。

EDMを聴くならもう少し低域の量感が多いヘッドホンの方が良いのでは?と思いますが深さではUtopiaに叶う予感がしないので、EDMを聞くにしてもUtopiaが一番良いと思えてきます。

MG PROでもEDMは良かったですが、Utopiaは更に良いかと思います。環境さえ整えばMG PROユーザーがUtopiaへ買い替えも個人的にはアリかと…

 

EDMが良いってとはレスポンスの良い低域ではないのか?と思われるかもしれませんが、レスポンスはかなり良いです。

ただ質感自体は硬く・細いというよりは太い質感かと思います。硬い・柔いはその楽器・音で変わる事ができる万能性があり一辺倒ではありません。

 

この低域の部分はボード、アンプ、電源がかなり効いていると思います。

ポータブルで愛用しているmojo2では試した結果、低域に大きな差を感じてました。

量感自体は据え置きとmojo2ではさほど変わらないのですが、沈み込める深さや質感の幅広さでは大きな差がありました。

utopia自体音量を取る事はむずかしくないですが、最高の満足を狙うのでしたら据え置きの方が良いかもしれません。

 

 

最後に

良くも悪くも上流の音を拾いまくるという特性がある以上、良いところだけを拾いまくって環境さえ整えればUtopiaが最善の選択なのでは?という考えになりました。

他のハイエンドヘッドホンも買えば見え方が変わってくるかもしれませんが、Utopiaに近い価格帯のヘッドホンをもう1度買うのはほぼ無理かと思います、ただ手持ちの中での最良はUtopiaです。

 

書くか迷っている間にUtopiaがディスコン機になってしまいましたね…

なんでディスコン機の感想を書いているんだろう…

後継機はあるらしいですが、最近のNPモデルのようにケーブルだけを追加・変更して出すのか、ある程度音が変わったmk2モデルを出すのか気になります